【後編1】覚えておくべきAccessオプション設定(クライアントの設定)

入門講習

覚えておくべきAccessオプション設定の前編、中編からの続きです。

本記事ではAccessのオプション「クライアントの設定」について解説します。クライアント設定はAccessの操作性に直結する項目も多くありますので、ぜひ参考にしてみてください。

併せて、前編、中編の設定内容も知っておきましょう

クライアントの設定 設定内容解説

オプション設定「クライアントの設定」画面

Accessを操作するための設定に関するオプションです。
ちょっとした変更だとしても、作業に見合った操作方法にすることで、大きな効率化につながることもあります

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Enterキー入力後の動作

Enterキーを押した後の動作を設定します。設定項目は次の3種類です。

設定項目説明
移動しないEnterキーを押してもカーソルは移動しない
次のフィールドEnterキー押下後、右隣のフィールドにカーソルが移動する
次のレコードEnterキー押下後、1つ下のレコード(の同じフィールド)に移動する

次のフィールドが横移動、次のレコードが縦移動と覚えればOKです。

フィールド移動時の動作

フィールド間をカーソル移動する際の、カーソルの位置を設定する項目です。

設定項目説明
フィールド全体を選択フィールド内文字を全て選択した状態
フィールドの先頭に移動フィールド内文字の先頭にカーソルが待機
フィールドの最後に移動フィールド内文字の最後にカーソルが待機

値を上書きする可能性があれば、フィールド全体(規定値)のままでOKです。

方向キーの動作

カーソルキーを押下した際のカーソルの移動方法を設定します。

設定項目説明
次のフィールド隣のフィールドに移動する
次の文字フィールド内の文字(値)を一文字ずつ移動する
全ての文字を移動すると、隣のフィールドに移動する

フィールド間移動はTABキー、フィールド内移動はカーソルキーと役割分担すると効率的かもしれません。

帳票フォームのレコードナビゲーションキー

帳票フォーム(表形式)における、カーソルの移動方法を設定します。

設定項目説明
なしカーソルキーの↓↑でフィールド間移動
カーソルキーの←→でフィールド内移動し、その後フィールド間移動
上/下カーソルキーの↓↑でレコード間移動
カーソルキーの←→でフィールド内移動し、その後フィールド間移動
左/右カーソルキーの↓↑でフィールド間移動
カーソルキーの←→でフィールド内移動し、その後レコード間移動

かなりカスタマイズが可能になっています。
レコード単位で入力するのか、同一フィールドを連続で入力するのかによって、最適な方法を選ぶとよいでしょう。

既定の検索/置換

検索ウィンドウ(Ctrl+F)を開いたときのデフォルト動作を決める項目です。テーブルやフォームでデータを探すときに、どこまで検索範囲を広げるか、何を対象にするかが変わります。

設定項目検索範囲動作内容
高速検索現在カーソルがあるフィールドのみ余計な検索をしないため速い。
該当フィールドのみ検索したい場
標準検索レコード全体(すべてのフィールド)検索を行ううえで最も一般的。
どのフィールドにあるか分からない
データを探すとき便利
フィールド検索の開始まず現在のフィールドを検索
→ 見つからなければ全体検索へ拡張
高速検索と標準検索の中間的挙動。
検索時間は少し伸びる場合あり

検索はよく使う機能の一つです。大量データを対象にする場合は、本項目を切り替えて行うことが、処理スピード向上のカギです。

確認

Accessでは、レコードの削除や一括更新等を行う際に、確認用のダイアログメッセージが表示されます。
本設定項目は、そのメッセージの表示/非表示を制御することができます。

設定項目動作内容
レコードの変更テーブルやフォーム上のレコードを、手作業で削除する際に
表示されるダイアログの表示可否を設定する
オブジェクトの削除オブジェクト(ナビゲーションウインドウに表示されている
テーブル、クエリ、フォームなど
)を削除する際に表示される
ダイアログの表示可否を設定する
アクションクエリアクションクエリ実行時に表示されるダイアログの表示可否
を設定する
リンク/読み取り専用
テーブル
外部データをAccessから操作する際に、編集できない状況に
遭遇した時に表示されるダイアログの表示可否を設定する
(主に読み取り専用となっている場合に表示される)

レコードの変更オブジェクトの削除アクションクエリは、いずれもAccess内のデータに変更を加える操作です。
これらを実行する際に表示されるダイアログメッセージは、処理内容を確認し、必要に応じてキャンセルできるようにするための仕組みです。

メッセージを非表示にすれば処理はスムーズになりますが、誤操作によるデータ削除や内容変更に気づけない可能性があります。そのため、この設定をOFFにする場合は注意が必要です。

基本的には、この設定は初期値のままONで運用することをおすすめします。
もし、VBAなどでアクションクエリを自動実行する場合は、DoCmd.SetWarnings メソッドを使用し、一時的に警告の表示を制御する方法が安全です。

既定の方向

カーソルの移動を制御する設定項目です。
設定項目として、左から右右から左の2つがあります。
右から左はアラビア語・ヘブライ語など右書き文化圏向けの設定で、入力方向やカーソル移動が反転します。日本語環境の場合は、いずれの設定でも変化が生じないため設定不要です

通常の並び順

テーブルを直接に格納されているデータの並び替えや、クエリの並び替え設定の並び順に関する設定です。

設定項目説明
インターフェイスモードWindows の言語設定に基づいた並び替え
テキストモードUnicode のコード順(内部コード順)に基づいた並び替え

インターフェイスモードはWindowsの言語設定に基づいた辞書的な並び替えが行われ、ひらがな・カタカナ・全角/半角が自然に並びます
一方、テキストモードはUnicodeコードポイント順に基づく機械的な並び順となり、記号や半角/全角が区別されるため、データ分析や特殊な文字処理に向いています。
通常の業務利用ではインターフェイスモードが適しています。

カーソル移動

本設定項目には、論理的視覚的という2つがあり、本来は文字幅が不揃いな言語でのカーソル挙動を調整する設定のようですが、日本語におけるAccess環境ではどちらを選んでもカーソルは1文字ずつ移動し、全角は幅が広く半角は狭いので、体感上ほとんど差はないです。

表示

最近使ったデータベースの一覧に表示するデータベースの数

Access を開いたとき、スタート画面に表示される「最近使ったファイル」の表示件数を指定します。初期値は最大値でもある50件が設定されています。

最近使ったファイルの表示画面

[ファイル]タブのコマンド一覧に表示する、最近使ったデータベースの数

最近使ったデータベースの一覧に表示するデータベースの数は、Access起動後の初期画面に表示される履歴なのに対して、こちらはメニュー[ファイル]をクリックした際に表示される使用履歴です。

同じような画面ですが、表示件数のそれぞれ独立して設定可能です

最近使ったフォルダの一覧から固定表示を解除するフォルダーの数

最近使った履歴一覧は、ピン止めで固定表示することができます。

本設定項目は、指定した数だけ ピン留めを自動解除する機能です。
たとえば、5と設定すると、古いフォルダーから順に5件のピン留めが外れるといった感じです。

キーボードショートカットを使ってファイルを開いたりするときに、Backstageを表示しない

BackStageとは、ファイルタブをクリックした際に表示されるBackStageビューのことです。

最近使ったファイルの表示画面

本設定項目がOFF(規定値)のままであれば、Ctrl+O(ファイルを開くのショートカット)を実行した際に、このBackStageビューが表示されます。
ONに設定すると、ファイルを選択するダイアログボックスが表示されます。

ステータスバー

本設定項目は、ステータスバーの表示/非表示を切り替えることができます。

ステータスバーとは、下図の赤枠部分です。

ステータスバーの位置

この部分には、主に以下のような情報が表示されます。

  • 現在のビュー表示(データシートビュー、デザインビューなど) ※バーから切り替えも可能
  • CapsLock/NumLockが有効かどうか
  • アクションクエリの実行状況

列や行をスライド表示する

本設定は、データシートビューをスクロールする際の見え方を切り替えるための項目です。
旧バージョンのAccessでは、この設定をONにすると表示が滑らかに、OFFにすると1行・1列単位でカクッとスクロールする動きになっていました。

しかし、現在のAccess(2016以降)ではWindows標準のスクロール方式が優先されるため、この設定を切り替えても動作に違いが出ない場合がほとんどです。互換性のために残っている設定項目と思われます。

操作タグをデータシート上に表示する

本設定は、データシートビューで特定のフィールドに操作補助アイコン(操作タグ)を表示するためのものです。旧バージョン(Access 2013以前)のAccessでは、日付入力欄やルックアップフィールドの隣に小さなアイコンが表示され、クリックすることでカレンダーや選択リストを呼び出せました。

しかし現在のAccessでは、仕様変更により、この操作タグはほとんど使用されておらず、同じ機能はフィールドを選択するだけで自動的に表示されます。よって、ON/OFFを切り替えても動作上の変化はありません

操作タグをフォームとレポートに表示する

操作タグをデータシート上に表示すると同様に、最近のバージョン(Access 2013以降)では、実質的に機能していません。

印刷

レポートやデータシートを印刷する際の余白の既定値(初期値)を設定する項目です

印刷の余白規定値を設定

上図のように、オプションで設定した余白の数値は、各印刷対象の印刷オプション画面に反映します。
毎回同じ設定を適用する場合は、事前設定しておくことで、毎回の処理が楽になります。

全般

Accessの動作通知・エラーメッセージ表示・表示形式などを制御する項目が含まれています。
ここで行う設定はAccessアプリ全体に影響します。

アドインユーザーインターフェースに関するエラーを表示する

本設定項目は、アドイン(外部拡張機能)を使っている場合に表示制御する設定です。

アドインがAccessにボタンを追加したり、リボンを拡張したりする場合、
正常に読み込めなかったり動作を妨げると、内部でエラーが発生することがあります。

設定項目説明
ONアドインの読み込み失敗・フォーム追加エラー・参照切れなどを表示する
開発者向け(特にAccess-VSTOアドイン・COMアドイン・参照設定を使う場合)
OFFエラーを非表示にし、静かに無視する
利用者向け(ユーザーが使うAccess環境ではOFF推奨)

操作の結果を音で知らせる

エラー発生時など操作中にシステム音を鳴らす設定項目です。
注意喚起としての効果は大きくなりますが、操作に慣れたユーザーにとっては、音が煩わしくなるため、そういった場合はOFFにしておきましょう。

4桁の年表示

設定は、日付入力時に2桁の年数が入力された場合、Accessがその年をどのように解釈するかを制御する項目です。

設定項目説明
ON入力された日付は必ず4桁の年として扱われます。
たとえば「25/1/1」と入力すると、自動的に「2025/01/01」と解釈されます。
OFFAccess が内部ルールに従って「19xx」「20xx」を判断します。
同じ「25」という年でも、環境やタイミングによって「1925」または「2025」と
解釈される可能性があります。

特別な理由がない限り、チェックONが推奨です。

詳細設定

Accessの起動時に、前回使用したデータベースを開く

本設定項目をONにすると、Accessを起動したときに前回開いていたファイルが自動で開きます。
複数のDBを使い分ける場合はOFFのままにしておきましょう。

既定の開くモード

Accessでファイルを開くときの動作を決める設定です。

設定項目説明
共有モード複数ユーザーが同時に同じDBへアクセス可能
排他自分だけが開ける。他のユーザーはアクセス不可

既定のレコードロック

複数のユーザがアクセスした時の競合処理方法を設定する項目です。

設定項目説明
ロックしない複数ユーザーが同じレコードに書き込み可能。ただし保存時に競合エラーが
発生する場合あり
すべてのレコードファイル開いた時点で全部ロックする
編集済みのレコード編集中のレコードだけロックする。共有DBでは最も実務向けの設定

レコードレベルでロックして開く

テーブル単位ではなく、「1件のレコード単位」でロックを行うかどうかを設定する項目。複数ユーザでDBを共有している環境ではONを推奨します。

OLE/DDEタイムアウト(秒)

Accessが外部アプリ(Excelなど)とDDE/OLE連携する際、応答がない場合に待つ秒数を設定する項目です。

再表示の間隔(秒)

Accessが他ユーザーの更新内容を画面に反映する間隔を設定する項目です。
値を小さくするとその分反映が早くなりますが、速度面が低下する可能性があります。

更新の回数

データ更新処理を再試行する回数を設定する項目です。
データ競合時の対応の一つで、他ユーザーがレコードを編集中の場合、Accessは設定した回数分リトライします。

ODBCの再表示の間隔(秒)

SQLServer等、ODBC接続された外部DBを参照している場合の再表示間隔を設定する項目です。
外部DBを接続していない場合は、特段の設定は不要です。

更新の間隔(ミリ秒)

Microsoft Jetデータベース(Access内部エンジン)が更新情報をリフレッシュする周期を設定する項目です。
既定値のままで問題ありません。

DDE操作

DDEとはDynamic Data Exchangeの略で、Windowsの古いアプリ間通信の仕組みです。
本設定項目は、その機能を有効にするかどうかを指定します。
最近の環境では使われることも稀だと思いますので、特段の設定は不要です。

コマンドライン引数

Access起動時に起動オプションを指定して制御するための設定領域とされています。

暗号化方法

データベースファイルを暗号化する方式の設定項目です。

設定項目説明
以前の暗号化方法を使用するAccess 2003以前との互換性を維持する
既定の暗号化方法を使用するAccess 2010以降採用、より強固な暗号化(AES)

既定のテーマ

本設定項目は、新しく作成するデータベースに対して、フォントや色のスタイルを定義できます。

本設定をONしておくことで、テーマを指定していないフォームやレポートを新規作成した場合、Office2013以降のテーマが初期デザインとして反映されます。既存のオブジェクトには影響しませんが、新しいデータベースやフォームを作成する際の統一感に役立つ設定です。

また、テーマファイル(拡張子thmx)がある場合は参照ボタンからファイルを指定して設定することができます。

まとめ

今回は、オプション設定の「クライアントの設定」について、各項目の設定内容を解説しました。
中には、一般的な使用用途では扱わない設定もありますが、カーソルの移動方法など目で見てわかる項目も多いです。

いずれも、ちょっとしたカスタマイズではありますが、その少しの変更で作業上は大きく効率化につながるものもありますので、いざという時に使えるように各設定項目を把握しておきましょう。

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