Access2024は、Ofiice2024の一つのアプリケーションとして、2024年10月に発表されました。歴代のAccessの新バージョン同様、2024バージョンでも複数の機能追加が行われています。
今回の記事では、Access2024で追加や変更された主な機能を解説していきます。せっかく追加された機能ですから、活用できるようポイントを押さえておきましょう!
Access2024の主な変更点
細かい点まで含めると、すべて網羅できていないかもしれませんので、あくまで「主な変更点」としてピックアップしていきます。
- Power Platform連携の強化(Microsoft Dataverseへの接続)
- Microsoft Edgeブラウザーコントロールの追加
- LLA対応による処理パフォーマンス向上
- デジタル署名の強化
- SQL編集機能の強化
Microsoft Dataverse連携の強化
「Dataverse」というのは、Microsoft Power Platformというサービスの中で使用されるクラウドデータベースです。Access2024では、このDataverseへの接続がスムーズに行えるようになりました。
この機能を理解する前提として、Power Platformについて少し触れます。
Power Platformは、Microsoft が提供するローコード開発プラットフォームであり、プログラミングの知識が少なくても、業務用アプリケーションなどを作成することができるサービス群の総称です。基本的には次の5つのサービスが含めれています。
- Power BI(データ分析用のツール)
- Power Apps(ローコードによるアプリ開発ツール)
- Power Automate(RPAツール)
- Power Pages(ローコードによるWebサイト構築ツール)
- Power Virtual Agents(ローコードによるチャットボット開発ツール)
Dataverseは、上記サービスで作成したアプリなどの主なデータ保存先として活用されます。
実際の変更点としては、メニュー「外部データ」に、Dateverse用のインポートとエクスポートのボタンが新設されました。

Dateverseへのインポートやエクスポートがやり易くなっただけでなく、リンクテーブルとして接続することができます。個人的にはこの部分のメリットが大きいと思いました。

Dateverseはクラウド型のデータベースとして活用できるので、Dateverseとリンクテーブルを結ぶことで、遠隔地同士でかつ、複数のユーザ間でも同一のAccessツールで作業ができるという大きなメリットがあります。
これまでこういった仕組みを作ろうとすると、外部DBとODBCによる接続を行う必要があり、少しハードルが高かったといえます。また、同じMicrosoftサービスである、SharePointを利用するという手段もありますが、複数人での同時使用に難があるなど、利用シーンが限られているのは正直なところです。
Dataverseとのコネクタが新設されたことで、よりスムーズなクラウド化が実現できると思います。
Microsoft Edgeブラウザーコントロールの追加
フォームのコントロールとして「Edgeブラウザコントロール」が追加されました。こちらはフォーム上にEdgeブラウザを埋め込んで、Webサイト等を表示することができるコントロールです。

Webサイト表示用のコントロールとしては、以前から「Webブラウザコントロール」がありました。こちらは現在サポートが終了したIE(Internet Explorer)ブラウザをベースにしたコントロールであり、Access2024でも使用することはできますが、エラーが発生したり、レイアウトが崩れたりと、現在の技術環境にマッチしていないものとなっています。
そこで今回登場したのが「Edgeブラウザコントロール」となります。こちらをフォームに配置して、Microsoftのサイトを表示してみます。

このように綺麗に表示することができます。また同様にレポートでも「Edgeブラウザコントロール」を配置することができます。サンプル画像はBing Mapを表示しているところです。

プロパティのコントロールソースでURLを保持していますが、MapのURLの場合は、住所、緯度・経度、ズームレベルなどが含まれており、それらはパラメーターとして設定できるので、これら切り替えることで動的なサイト表示を行うこともできます。実際の動作も違和感なく操作できますので、アイデア次第で様々なことができそうです。

LLA対応による処理パフォーマンス向上
Accessには32ビット版と64ビット版が存在していますが、従来の32ビット版Accessでは、稼働させている端末の物理メモリに関わらず、2GBの仮想アドレス空間しか使用できませんでした。例えば物理メモリが4GB以上のPCであっても、その能力を最大限に発揮できないため、メモリ不足によるパフォーマンスの低下や不安定さを招く可能性があったのです。
ましては、現代のPCは搭載されている物理メモリが4GB以上、多くは8GBや16GBとなっていますので、この制約は時代にマッチしていないといえます。
Access2024では、LLA(Large Address Awareの略称)により、64ビット版Windows上でおける、32ビット版Accessの仮想アドレス空間が2GBから4GBに増加しました。これにより、32ビット版Accessで作成したツールで、規模の大きなもの(データ件数が多い、フォームなどのオブジェクト数が多い、プログラムが複雑等)であっても、処理速度の向上や動作の安定性向上が期待できます。
32ビットアプリケーションが64ビット版Windows上で、通常よりも大きな仮想アドレス空間(最大4GB)を利用できるようにする技術。
デジタル署名の強化
Accessにはデジタル署名を付与することで、安全性のお墨付きを与えて、VBAコードなどを安全に運用できるセキュリティの仕組みがあります。この仕組み自体は元々備わっていましたが、適用できるのが過去のデータベース形式(「.mdb」「.mde」)のみとなっていました。
Access2024では、デジタル署名の付与を最新のデータベース形式([.accdb],[.accde])にも適用できるよう強化されました。
世間では、セキュリティ保護を強化する流れの中で、Microsoft製品のマクロ機能を、物理的に使用不可にする対応を取る会社もあるようです。デジタル署名の付与が可能になったことで、デジタル署名されたマクロを除き、すべてのマクロを無効にすることもできる(「オプション」→「トラストセンター」)ので、セキュリティ強化の流れに対する対策の一つにすることができそうです。
SQL編集機能の強化
クエリの作成は「デザインビュー」か「SQLビュー」で行います。従来のビューの切り替えを、メニュー右端のボタンから行う必要がありました。

Access2024では、対象となるクエリの右クリックメニューからSQLビューへの切り替えを行うことができるようになりました。

ちょっとした変更点ですが、SQLビューを多用する方にとっては、なかなかに便利な変更点だと思います。
また、SQLビュー関連の変更点として、Microsoft365限定(Access2024の発表と同じ、2024年10月機能追加)ではありますが、「Monaco SQLエディター」を使用することができるようになりました。こちらのエディターを使用すると、VBE(VBエディター)のように、オートコンプリートやエラーチェック、そのほか行番号表示などが可能になっており、SQLの編集作業が大幅に向上するでしょう。
まとめ
Access2024の主な新機能として5点ピックアップして解説しました。
Accessもバージョンアップを繰り返し、そのたびに新機能が追加されてきましたので、劇的な変化というのは少なくなってきています。Access2024の変更点を見ていくと、現代の環境や技術にマッチするようなものが多い印象です。こういう変化をみると、MicrosoftもまだまだAccessを進化させていくぞ…という気概が見えて、個人的には喜ばしいことだと考えています。