レポートはテーブルやクエリのデータを使い、印刷物を作成するためのオブジェクトです。フォームと同じように自由にレイアウトを作れることが特徴ですが、フォームにはない、レポートならではの特徴もあります。
この記事では、レポートの概要と4つのレポート種別を解説します。
レポートの概要
Accessにおけるレポートの位置づけ
Accessは、複数のオブジェクトを組み合わせることで、その機能を最大限に発揮します。
以下の図は、Accessにおける各オブジェクトの関連性を示したものです。ご覧いただくと分かるように、レポートは、テーブルやクエリのデータを、印刷物として出力する役割を担っています。
もちろん、テーブルやクエリをそのまま表形式で印刷することは可能ですが、レポートを活用することで用途に応じた、様々なレイアウトで印刷することができます。
今世の中は、電子化の流れが加速していますが、紙の請求書や会議の参考資料、あて名ラベルなど、まだまだ印刷物の需要は根強いものがありますので、レポートについてもしっかり学んでいきましょう。

レポートの種類
過去記事で、フォームには7つの画面形式があることを解説しました。詳細はこちらの記事をご参照ください。
フォームと同様に、レポートにも複数の印刷形式がありますが、フォームとは少し方法が異なります。フォームの場合は、プロパティシート「規定のビュー」を「単票形式(1画面に1レコード表示)」や「帳票形式(一覧表表示)」に変更することで、画面形式の切り替えが可能でした。
一方、レポートの印刷形式は、フォームのような専用のプロパティ項目は存在せず、基本的にはデザインビューのコントロール配置やセクションの高さ調整によって行います。調整次第で、様々な印刷形式を作成することは可能ですが、今回は代表的な4つの印刷形式をご紹介します。

特に「詳細」セクションの高さを調整することで、単票になったり表になったりするよ
- 表形式レポート
- 単票レポート
- 集計レポート
- ラベル印刷
表形式レポート

【特徴】
- 複数レコードを一覧形式で表示。
- Excelのワークシートのようなイメージで印刷可能。
- 詳細セクションの高さは通常、各レコードの表示に必要な最低限の高さに設定する
【メリット】
- [一覧性の高さ] 複数レコードの情報(データ)を一度に把握可能。
- [作成難易度] シンプルな構成であるだけに、比較的作成が容易。
- [コストパフォーマンス] 1枚の紙に印刷できるデータ量が多いため、用紙の使用枚数も抑えられる。
【デメリット】
- [詳細情報の確認] 各レコードの全情報を一度に表示するには、表示スペースに限界がある。フォームと異なり横スクロールは出来ないので、A3などの大きな用紙サイズを用いる必要がある。
- [複雑なレイアウトの難しさ] あくまで”一覧表”なので、複雑なレイアウトは苦手。
単票レポート

【特徴】
- 1件のレコードの全フィールドを1画面に表示。
- 詳細な情報を個別に確認したい場合に適している。
- 各フィールドが独立して配置されるため、レイアウトの自由度が高い。
- 詳細セクションの高さを調整し、1レコード分の情報が収まるよう調整する。
【メリット】
- [見やすさ] 1つのレコードの情報を大きく表示できるため、内容をじっくり確認可能。
- [レイアウト] レイアウトの自由度が高く、視覚的に訴求力のあるレポートを作成可能。
【デメリット】
- [一覧性の低さ] 複数レコードを同時に閲覧することができない。
- [大量データの場合] レコード数が多い場合、印刷枚数が多くなる可能性がある。
集計レポート

【特徴】
- データに基づいた集計結果や分析結果を分かりやすく表示できる。
- 表形式レポートをベースに、グループヘッダー/フッターを活用して集計情報を付加する形で作成されることが多い。
- グループ化を用いて、カテゴリごとの合計、平均、件数などを表示する。
- 上記サンプルでは、所属部署ごとの基本給与合計額を集計している。
【メリット】
- [分析や傾向把握]合計や平均を用いることで、データ分析等が可能。
- [一覧性の高さ] 基本は表形式ベースであることが多いので、複数データを把握可能。
【デメリット】
- [詳細情報の確認] 各レコードの全情報を一度に表示するには、表示スペースに限界がある。横スクロールも可能だが、見づらさは否めない。
- [スキルが必要]グループ化の設定や集計関数の理解が必要。
ラベル印刷

【特徴】
- テーブルやクエリのデータを宛名ラベルとして、市販のラベル用紙に合わせて印刷するために特化した形式。
- 複数のフィールドを組み合わせて一つのラベルに表示可能。
- 宛名ラベルウィザードを利用して、容易に作成可能。
【メリット】
- [効率性]宛名ラベルや商品ラベルなどを効率的に作成可能。
- [対応用紙の幅広さ]各種メーカーの様々なラベル用紙に対応している。
- [正確性向上] 手書きで宛名を記載する必要がないため、正確性も向上する
【デメリット】
- [スキルが必要]ラベル用紙内に情報が収まるよう、正確な位置を調整する必要がある。

類似形式に、請求書や納品書を印刷するための「伝票ウィザード」や、市販のハガキに印刷する「はがきウィザード」が用意されているよ
レポートデザインの画面構成
ここまで各レポートの概要をご説明しましたが、レポートは基本的には3層、必要に応じて4層の「セクション」で構成されています。レポートを作成するためには、この画面構成を理解することが重要です。
下表がレポートの「セクション」です。一つずつ解説します。
- レポートヘッダー/レポートフッター
- ページヘッダー/ページフッター
- グループヘッダー/グループフッター
- 詳細
レポートヘッダー/レポートフッター

レポートヘッダーは、レポートの先頭に一度だけ表示されるセクションです。サンプル画像のようなレポートのタイトルや、日付、ロゴなどを配置するのに適しています。
レポートフッターは、レポートの末尾に一度だけ表示されるセクションです。レポートの締めくくりとして作成者や連絡先、計算結果の合計などを配置するのに適しています。
ページヘッダー/ページフッター

ページヘッダーは、レポートの各ページの上部に表示されるセクションです。サンプル画像のようにフィールド名などを配置するのに適しています。
ページフッターは、レポートの各ページの下部に表示されるセクションです。ページ番号、印刷日時などを配置するのに適しています。
グループヘッダー/グループフッター

グループヘッダーは、レポートでデータをグループ化した際、各グループの先頭に表示されるセクションです。サンプル画像は「所属名」でグループ化している様子です。
グループフッターは、レポートでデータをグループ化した際、各グループの末尾に表示されるセクションです。そのグループの小計、平均、件数などの集計結果を表示するのに適しています。サンプル画像では「基本給与」の合計を表示しています。
グループヘッダー/グループフッターを設定するには、デザインビュー画面下部のグループ化に「グループの追加」を行います。
詳細

選択したテーブルやクエリの各レコードの内容を表示するために使用する、レポートのメインともいえるセクションです。テキストボックスなどのコントロールを配置し、各フィールドの値を表示します。
このセクションの高さと配置が、レポートの基本的な表示形式(表形式、単票形式など)を決定します。 繰り返し表示されるセクションであり、レコードの数だけ表示されます。
まとめ
今回はレポートの基本的な概要ということで、オブジェクトにおけるレポートの位置づけや、レポートの種類を解説しました。
レポートはフォームと似ているオブジェクトではありますが、作成するにあたり、フォームとは考え方や手順が異なるオブジェクトでもあります。本記事ではそのあたりにも触れていますので、初めの一歩として各レポートの特性をしっかり理解していきましょう。